『そっと背中を押してくれる(仮)』③

『そっと背中を押してくれる(仮)』③

この人も一人なのだろうか。

梨沙子は思った。

こういうところは家族連れやカップルが多くて、

なんだかんだ一人でいることを気にしてしまう自分がいる。

なので、一人で来ている人を見ると、親近感が湧き、少し安心する自分がいる。

もう一口、缶ビールに口をつけながら、

そっと横目で隣を確認する。

彼もこちらを見ていて、ふと目が合う。

お互い驚いたのち、軽く会釈をした。

同世代くらいだろうか。

優しそうな顔立ちと落ち着いた雰囲気を感じた。

少しの沈黙の後、

「お祭り好きなんですよね」と彼が言った。

一瞬、私に話しかけているのだろうか?と思っていたところ

「あ、すみません。突然話しかけてしまって」と彼が言ったので

「いえいえ、私もこういう場所好きです」と答えた。

「昼間に外で飲むビール、最高でしょ?」

「はい。最高です。」

そこから少し談笑していると、

彼が「美術館って興味ありますか?」と聞いてきたので

「なくはないです」と答えた。

                                                                        

                                                                        

続く。