『そっと背中を押してくれる(仮)』①⑦
- 2021.10.06
- 小説
不妊検査を受けてみよう、そう少し前から考えていた。
10代の頃、大人になったら仕事もプライベートも充実してて
20代後半になったら結婚して子どもも育ててるだろうと、そんな漠然と将来を考えていた。
大学卒業後、社会人になって毎日の忙しさに追われてるうちにあっという間に20代が過ぎていった。
そして、30代になった。
もし健二との間に子どもを授かれなかった場合、この先どうするのだろうか。
また誰かと恋愛をして結婚したいと思える相手が出来たとき、もし相手が子どもを望む人だったら授かることができるのだろうか。
そんな将来に向き合うためにも不妊検査を受けてみたいと思った。
そして不妊検査を受けようと思った理由がもう一つ。健二との将来のことだ。
もし不妊検査の結果、何らかの問題があって自然に妊娠することが難しかった場合、その時は健二の将来を尊重したいと思った。
検査の結果特に問題が見当たらなかった場合、「この1年で子どもを授かれなくても健二と一緒に生きる将来を模索してみたい」そう健二に伝えたいと考えていた。もしかしたら、子どもができなくても健二も私と一緒にいたいと思ってくれていると梨沙子は感じていた。
思い立ったが吉日、前々から調べていたクリニックにさっそく電話をしたところ、ちょうど再来週の土曜日に空きができたということで、予約することができた。
その日の夕食時、「再来週の土曜日なんだけど友人とランチに行くことになったんだけど大丈夫かな」と健二に伝えると、「その日は自分も大学時代の友人がこっちに来ることになって久しぶりに会うことになったんだ」と健二が言った。
(続く)
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