小説

『そっと背中を押してくれる(仮)』③

この人も一人なのだろうか。 梨沙子は思った。 こういうところは家族連れやカップルが多くて、 なんだかんだ一人でいることを気にしてしまう自分がいる。 なので、一人で来ている人を見ると、親近感が湧き、少し安心する自分がいる。 もう一口、缶ビールに口をつけながら、 そっと横目で隣を確認する。 彼もこちらを見ていて、ふと目が合う。 お互い驚いたのち、軽く会釈をした。 同世代くらいだろうか。 優しそうな顔立 […]

『そっと背中を押してくれる(仮)』①

日曜日の午前7時。梨沙子はリビングのソファでぼんやりと窓の外を眺めていた。 窓の外に広がる景色は雲ひとつないすっきりした青空で、 まるで、梨沙子の今の気持ちを表しているようである。 今日は、9月25日。 日曜日。 昨年の5月に健二と出会い、ある約束をした日から今日でちょうど1年。                                                             […]