『そっと背中を押してくれる(仮)』②
- 2020.11.07
- 小説
立花梨沙子は、今年で33歳になる。
誕生日がまだ来ていないので、正確には32歳である。
前の恋人と別れて3年近く経つ。
もうすっかり一人の生活にも慣れてきて、日々充実した生活を送れていると思う一方、
将来に対する不安や焦りを感じないわけではない。
それらの気持ちのザワザワを打ち消すために、ヨガ教室に通い始めたり、
最近は家で一人飲みに凝り始めたりしている。
5月、代々木公園で開催しているタイフェスというものに行くことにした。
公園内にたくさんの出店が出ており、タイ料理が堪能できる。
昨年初めて一人で来て、今年も密かに楽しみにしていた。
たくさんの人だかりだ。
ガパオライスと肉料理がのったプレートと缶のシンハービールを買って
どこか座って食べられる場所を探す。
ちょうどカップルが席を立つのが見えて、席を見つけることができた。
座ってゴクゴクとビールを飲んでいたところ、
「隣、空いていますか?」
これが、私と健二との出会いであった。
(続く)
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