『そっと背中を押してくれる(仮)』⑦

『そっと背中を押してくれる(仮)』⑦

8月の第1週の土曜日、私たちはお台場の花火大会に行くことになった。

最後に花火を生で観るのはいつぶりだろうか。

久々の生で観る花火にテンションが上がっていた。

当日、彼が予約してくれたレストランから花火を鑑賞した。

「私、こういうの憧れだったんですよね」

「そう?喜んでもらえてよかった」

                                                                       

花火大会からの帰り道、梨沙子は花火の余韻に浸っていた。

彼も黙っている。

そして、しばらく沈黙が続いた後、

彼から「良かったら、ウチで飲み直しませんか?」

「お邪魔してもいいんですか?」

                                                                        

初めて行った彼の家は、綺麗に片付いた落ち着いた雰囲気の2LDKだった。

「橋本さんらしいお部屋ですね!」

「そう?どこらへんが?」

「きちんと整理整頓されてて、シンプルなところとか!」

                                                                        

そして、その夜私たちは初めて身体を重ね合わせた。

                                                                        

そこからも、2人の関係は変わらず穏やかに続いていた。

                                                                        

9月、梨沙子と健二は1泊2日の温泉旅行に行った

温泉旅行の最中、梨沙子は健二に「僕に何か不満あったりする?」と聞かれた。

「うーん、特に今のところないかな」

「そう?なら良かった」

本当は梨沙子は健二に少しだけ壁を感じていた。

梨沙子自身の性格のせいなのか、その壁が何なのかは掴めずにいた。

温泉旅行から帰って2日後、健二から大事な話があるとメッセージが入った。

土曜日、健二の部屋で2人は会った。

そこで打ち明けられた大事な話は思いもよらない提案だった。

梨沙子は1週間考えた後、その提案を受けることにした。

                                                                        

(続く)