『そっと背中を押してくれる(仮)』⑦
- 2021.01.27
- 小説
8月の第1週の土曜日、私たちはお台場の花火大会に行くことになった。
最後に花火を生で観るのはいつぶりだろうか。
久々の生で観る花火にテンションが上がっていた。
当日、彼が予約してくれたレストランから花火を鑑賞した。
「私、こういうの憧れだったんですよね」
「そう?喜んでもらえてよかった」
花火大会からの帰り道、梨沙子は花火の余韻に浸っていた。
彼も黙っている。
そして、しばらく沈黙が続いた後、
彼から「良かったら、ウチで飲み直しませんか?」
「お邪魔してもいいんですか?」
初めて行った彼の家は、綺麗に片付いた落ち着いた雰囲気の2LDKだった。
「橋本さんらしいお部屋ですね!」
「そう?どこらへんが?」
「きちんと整理整頓されてて、シンプルなところとか!」
そして、その夜私たちは初めて身体を重ね合わせた。
そこからも、2人の関係は変わらず穏やかに続いていた。
9月、梨沙子と健二は1泊2日の温泉旅行に行った
温泉旅行の最中、梨沙子は健二に「僕に何か不満あったりする?」と聞かれた。
「うーん、特に今のところないかな」
「そう?なら良かった」
本当は梨沙子は健二に少しだけ壁を感じていた。
梨沙子自身の性格のせいなのか、その壁が何なのかは掴めずにいた。
温泉旅行から帰って2日後、健二から大事な話があるとメッセージが入った。
土曜日、健二の部屋で2人は会った。
そこで打ち明けられた大事な話は思いもよらない提案だった。
梨沙子は1週間考えた後、その提案を受けることにした。
(続く)
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