『彼女が死んだ。』

『彼女が死んだ。』

※人の死に関する話ですので、抵抗がある方は読まないことをおすすめします。

                                                                        

今週末から公開される新作映画のコマーシャルがテレビで流れていた。

彼女のことを思い出す。

彼女とは、小・中・高校と同じ学校だった。

高校2年生の時は同じクラスだったと思う。確か小・中学校でも何度か同じクラスになったことがあったと思う。

特別仲が良かったわけではなく、高校卒業後は顔をあわせることもなかった。

再会したのは大学卒業後、新卒で入社した会社の歓迎会の帰りの電車である。

見た目は大人っぽく、綺麗になっていたが、話すと昔と変わらない雰囲気に学生時代を思い出す。

彼女も高校卒業後から今までずっと地元に残っていたようだ。

それから何度か帰りの電車で彼女と会うようになり、会った日は帰りに飲みに行くようになり、休日には一緒に買い物に行ったりするようになった。

7月、私たちは付き合い始めた。

付き合い始めてからも特に問題なく順調に付き合えていると思っていた。

週に2回は会い、夏休みには旅行もした。

社会人2年目、彼女と付き合って1年が経とうとしていた。

仕事にも慣れ、自分なりのペースも掴めてきて、ゆくゆくは彼女と同棲を始めたいと思っていたときのことだ。

仕事終わり、いつも来る彼女からのメッセージが今日は来ていなかった。

昨日の夜のメッセージは既読になっている。

仕事が忙しいんだろうと思い、”仕事終わったよ”とだけメッセージして、彼女からの返事を待った。

帰宅途中、駅から自宅まで歩いていると知らない電話番号からの着信。

電話に出ると、彼女の父親からだった。

今朝、彼女は線路に飛び降りて自殺したということを彼女の父親から告げられた。

あまりに突然のことに言葉が出なかった。

そこから数日の記憶がない。

後日、彼女の家に行った際、母親からは一切目を合わせてもらえず、祖母からはどうして守ってくれなかったのと泣かれた。

父親だけは、優しかったことを覚えている。

遺書はなかったようだ。聞いた話によると会社でも特に変わった様子はなく、前日も定時で上がっていたようだ。しかし、前日帰宅したのは22時を過ぎていたみたいだ。

彼女の自殺は地元でも噂になっていて、彼女の死を聞いた誰かによって、うちに嫌がらせの電話や手紙がきていた。ひどい言葉もあった。

なぜ、彼女は自殺してしまったのか。

考えても考えても分からなかった。

自分と一緒に過ごした時間はなんだったのか。なぜ自分は彼女の気持ちに気づかなかったのか。彼女のことを知っているようで何も理解できてなかったんじゃないか。

自分といた時間が嘘だったんじゃないかとまで思い始めていた。

あれから、毎日のように彼女とのメッセージのやりとりや写真を見返している。彼女や友人のSNSまで辿っていき、何かを探していた。

でも、どこにも答えはない。

そんな日々から半年が経とうとしていたとき、テレビを見ていたら速報が流れてきた。

人気有名女優の自殺。まだ、32歳だった。

元アイドルからの女優への転身で、CM、映画、ドラマと引っ張りだこで世間からの好感度も高い女優の自殺に世間に衝撃が走った。遺書はなかったようだ。

連日、テレビやネットニュースに彼女の自殺が取り上げられている。

その中には、事務所批判や芸能界の闇についてなどの意見もあった。SNS上にもたくさんの意見があり、悲しむ声が多い一方で、元彼や今彼と噂されている人への誹謗中傷、行き過ぎたものだと他殺説まで出ていた。

人気有名女優と彼女の自殺を重ねていた。

なぜ自殺を選んだのかは周りには誰にも分からない。彼女が何を思って、何を考えてたのかは彼女にしか分からない。

ただ一つ、彼女はちゃんと存在していて、一緒に過ごした時間があった。

人にはいろいろな面があり、彼女のこと知らなかったこともたくさんあったと思う。だけど、僕の前に彼女は確かにいて、好きを確かめ合った彼女のことも信じよう。

そう思ったとき、考えるのはやめた。

今週末公開される自殺した女優が最後に出演した映画を観に行こうと思う。

彼女が生きた証は残り続けると思うから。

記憶の中に、思い出と共に。

完。